みなさん、こんにちは。
先日、Eテレで「昔話法廷」を視聴しました。
テーマは浦島太郎。
浦島太郎という昔話のオチは皆様ご存知の通り、
玉手箱を開けると老けてしまったというものです。
さて、浦島太郎は竜宮城相手に損害賠償請求できるのでしょうか。
老化は損害に当たりそうですが証明するのは難しそうですね。
そもそも、竜宮城に対して日本の民法は適用されるのでしょうか。
いろいろ疑問は尽きません。
所詮は昔話なので真剣に考えてはいけないといえば確かにそうではありますが…。
さて、本題。
今回は行政法のテキストを紹介したいと思います。
行政法の参考書は、だいたい「行政法総論」と「行政救済法」の2つで構成されています。
学部でも、「行政法総論」の講義と「行政救済法」の講義が設置されてました。
私自身は総論のみで救済法は独学しました。
入門書
行政法の入門書といえば藤田宙靖『行政法入門(第7版)』です。
行政法は行政に関する法の総称です。
憲法や民法はそれぞれ憲法と民法という特定の法律を持っています。
一方で、行政法には一対一対応の法律がありません、あくまでも総称です。
この辺り、行政法の学習は抽象的で範囲も広く、つまづきポイントのように思われます。
まずは、本書のような薄い入門書で行政法を概観することが重要です。
藤田先生が総論と救済法について優しい語り口で説明してくれているので、行政法に議論の内容が比較的追いやすいかと思います。
行政法の体系や用語を短時間で理解することができるので非常にお勧めです。
基本書
入門書を読み終えた後は、櫻井啓子=橋本博之『行政法(第6版)』で勉強するのがいいと思います。黒と青との二色刷りです。
多くの司法試験受験者が用いているそうで、本書は有名な行政法の教科書です。
行政法の内容がコンパクトに一冊にまとまっています。
判例については、別途、共著の橋本先生が『行政判例ノート(第4版)』を出しているので組み合わせると勉強が進むと思います。
本書は判例の一部分を掲載して、判例の要所だけを抑えるというスタイルです。
行政法の判例はたくさんありますから、少ない労力で多くの判例を網羅できる点ではありがたいですね。
判例百選との兼ね合いですが、行政法をしっかり学びたい方は判例百選Ⅰ・Ⅱを、判例の要所だけ抑えたい方は判例ノートを使うことをお勧めします。
余談
行政法の面白さを味わうのであれば、
原田尚彦『行政法要論(全訂第7版補訂2版)』がお勧めです。
私自身、上記のテキストでの勉強だけでは行政法の面白さを理解できていませんでした。
行政法はなんとワクワクする分野なのか!
特に原田先生は行政規制と国民保護との関係について研究されていたことから、規制権限不行使の記述は一読の価値があると思います。
そして、予防原則が提唱されている現在において、原田先生が本書で提起している問いは重要であると思います。
私自身は本書をとても気に入っています。
もっと早くこの本を読んでいれば行政法を深く勉強していたかもしれません。
実際、自分が受講したことのある行政法の教授は本書に影響を受けて行政法に興味を持ったとおっしゃってました。
あまり使用者を見かけないので、このようなところで『行政法要論』の良さを共有できると本当に嬉しいですよね。
ただ残念なことに本書は絶版になっています。
図書館か古書店で探してみてください。
応用
行政法をさらに勉強したいという方は、塩野宏『行政法Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ』をお勧めします。
それぞれ総論、救済法、組織法を扱っており、大変ボリュームがあります。
的確で飾らない文章に、示唆に富む数々の注がポイントです。
特に文章は無味簡素ですが、噛めば噛むほど味わい深いものとなってます。
補足ではありますが、塩野本と並んで言及されることの多い宇賀克也『行政法概説Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ』と比較しておきます。
塩野本は縦書き、薄め、本文少なく、注多め、という感じです。
一方で、宇賀本は横書き、厚め、本文(情報量)多く、注少なめ、という感じです。
宇賀本には予防原則や課徴金制度(独禁法・景表法)にも言及があるなど、情報量はかなり多いと思います。
予防原則と課徴金制度について言及している行政法の教科書を私は目にしたことがありません。
詳細な情報量を求めるのであれば宇賀本の方がいいかもしれません。
ではまた今度。