元法学徒のブログ

公共政策を勉強している元法学部生です。法学・公共政策学に関する本の内容を投稿していきます。

国際法のテキスト

みなさん、こんにちは。

 

先日、高性能な折り畳み傘を購入しました。

最近の折り畳み傘は速乾、晴雨兼用、高強度、自動開閉など、いろんな機能がついていますよね(ついてないのもあります)。

相場としては3000円〜5000円くらいですかね。

 

折角買ったんですが、あいにく梅雨があまりに早く明けてしまい、実はあまり性能を発揮できない状態です…。

ちょっと残念。

 

さて、本題。

今回は国際法のテキストについて紹介したいと思います。

学部1年に国際法を勉強して以来、すっかり内容を忘れていました。

ただ、必要に追われて国際法を復習せざるを得ず、あらためて国際法について学び直しました。

 

以下では、その際に用いた参考書を紹介しようと思います。

 

入門書

国際法を概観する際に使用したのは、伊藤塾『国際公法(伊藤真実務法律基礎講座7)』です。

 

 

国際法に関する知識がコンパクトにまとめられています。

国際法の教科書は分厚いことが多いのですが、本書では必要最低限の知識が簡潔に整理されています。薄いので繰り返し読んで、国際法の基礎を固めましょう。

 

各章の初めに設問が提示され、それに沿って国際法の知識を実践的に学んでいきます。

判例の掲載等は少ないですが、超重要判例については要所要所で言及があります。

 

基本書

国際法の定番の教科書といえばいくらかあります。

自分が使っていたのは柳原正治ほか『プラクティス国際法(第3版)』と、小寺彰ほか『講義国際法(第2版)』の2冊です。

 

国際法のテキストは分厚い上に高額なので、正直2冊も買う必要はありません。

必要であれば、適宜、図書館等で閲覧するのがいいと思います。

私の場合は、講義で『プラクティス国際法』を指定され、独学で『講義国際法』を買い直したという感じです。

 

 

『プラクティス国際法』は普通の教科書という感じです。他の教科書と比べると、「人権の国際的保障」の説明が手厚い印象を受けます。

割と改訂されているので、最新の議論もフォローすることが可能です。

 

個人的には『講義国際法』がおすすめなのですが、こちらは共著者が亡くなって以降アップデートされていません。

ちなみにおすすめの理由は後で述べます。

 

話は戻りますが、『プラクティス国際法』を選んだ場合には、

副読本として『演習 プラクティス国際法』を併せれば勉強しやすいかもしれません。

 

 

私自身は演習版は図書館で閲覧していました。人権の章のみ重点的に勉強した記憶があります。

 

個人的におすすめなのが、こちらの『講義国際法(第2版)』です。

 

 

『講義国際法』は独学がしやすい構成なっています。各章各節に問いが提示されていて、その問いにそった知識が記述されています。

自分が何を勉強していて、その知識がどう活かせるかが理解しやすい構成になっています。

各章の参考文献も充実していて深く国際法を勉強する際にも有用です。

 

ただ残念なことに、共著者の方が亡くなられて以降、改訂や補訂がされていません。

2013年の補訂が最後になっています。

 

そのため、最新の議論や論点まではフォローできていない点は注意が必要です。

 

判例集

国際法判例集といえば『国際法判例百選(第3版 )』か、「判例国際法(第3版)」だと思います。

私自身は、判例百選(第2版)を使っていて、『判例国際法』の方は図書館で必要な箇所だけ閲覧していました。

 

 

判例百選は第3版が最近出たので、最新の判例などがフォローされています。

ちなみに、10年ぶりの改訂だそうです。

私は9年半目に第2版を買ってしまい、直後に第3版が出ると知った時はショックを受けました…。

判例百選の改訂情報には気をつけましょう。

 

こちらの『判例国際法(第3版)』を判例集として有名です。

 

 

判例国際法』は高価ですので購入はおすすめしません。

図書館で利用しましょう。百選の2倍の量の判例が収録されているので情報量は断トツです。

解説もわかりやすいと思います。

 

余談 試験対策

資格試験を受けるのに国際法が必要という方は、伊藤塾国際法(公務員試験対策1冊で合格シリーズ7)』が良いかもしれません。

 

 

入門書としておすすめした伊藤塾『国際公法』よりは厚いです。

その分、内容が詳しく、かつ、重要判例も多めに紹介されてます。各章に一問一答が設けられているので知識の定着にも役立ちます。

特筆すべきは、巻末の論証カードです。国際法の試験で問われやすい論点が簡潔にまとめられています。

資格試験だけでなく定期試験対策に利用するのもありかもしれません。

 

ただ、2003年の本であることから最新の議論ではないことに注意が必要です。

別途、教科書等で知識はアップデートしておきましょう。

 

こうして整理してみると、国際法の参考書は頻繁にはアップデートされていないようですね。

 

ではまた今度。

行政法のテキスト

みなさん、こんにちは。

 

先日、Eテレで「昔話法廷」を視聴しました。

テーマは浦島太郎。

浦島太郎という昔話のオチは皆様ご存知の通り、

玉手箱を開けると老けてしまったというものです。

 

さて、浦島太郎は竜宮城相手に損害賠償請求できるのでしょうか。

老化は損害に当たりそうですが証明するのは難しそうですね。

そもそも、竜宮城に対して日本の民法は適用されるのでしょうか。

いろいろ疑問は尽きません。

所詮は昔話なので真剣に考えてはいけないといえば確かにそうではありますが…。

 

さて、本題。

今回は行政法のテキストを紹介したいと思います。

行政法の参考書は、だいたい「行政法総論」と「行政救済法」の2つで構成されています。

学部でも、「行政法総論」の講義と「行政救済法」の講義が設置されてました。

私自身は総論のみで救済法は独学しました。

 

入門書

行政法の入門書といえば藤田宙靖行政法入門(第7版)』です。

 

 

行政法は行政に関する法の総称です。

憲法民法はそれぞれ憲法民法という特定の法律を持っています。

一方で、行政法には一対一対応の法律がありません、あくまでも総称です。

この辺り、行政法の学習は抽象的で範囲も広く、つまづきポイントのように思われます。

 

まずは、本書のような薄い入門書で行政法を概観することが重要です。

藤田先生が総論と救済法について優しい語り口で説明してくれているので、行政法に議論の内容が比較的追いやすいかと思います。

行政法の体系や用語を短時間で理解することができるので非常にお勧めです。

 

基本書

入門書を読み終えた後は、櫻井啓子=橋本博之『行政法(第6版)』で勉強するのがいいと思います。黒と青との二色刷りです。

 

 

多くの司法試験受験者が用いているそうで、本書は有名な行政法の教科書です。

行政法の内容がコンパクトに一冊にまとまっています。

 

判例については、別途、共著の橋本先生が『行政判例ノート(第4版)』を出しているので組み合わせると勉強が進むと思います。

 

 

本書は判例の一部分を掲載して、判例の要所だけを抑えるというスタイルです。

行政法判例はたくさんありますから、少ない労力で多くの判例を網羅できる点ではありがたいですね。

 

判例百選との兼ね合いですが、行政法をしっかり学びたい方は判例百選Ⅰ・Ⅱを、判例の要所だけ抑えたい方は判例ノートを使うことをお勧めします。

 

余談

行政法の面白さを味わうのであれば、

原田尚彦『行政法要論(全訂第7版補訂2版)』がお勧めです。

 

私自身、上記のテキストでの勉強だけでは行政法の面白さを理解できていませんでした。

 

しかし、原田先生の『行政法要論』を読めば目から鱗です。

行政法はなんとワクワクする分野なのか!

 

 

特に原田先生は行政規制と国民保護との関係について研究されていたことから、規制権限不行使の記述は一読の価値があると思います。

そして、予防原則が提唱されている現在において、原田先生が本書で提起している問いは重要であると思います。

 

私自身は本書をとても気に入っています。

もっと早くこの本を読んでいれば行政法を深く勉強していたかもしれません。

実際、自分が受講したことのある行政法の教授は本書に影響を受けて行政法に興味を持ったとおっしゃってました。

あまり使用者を見かけないので、このようなところで『行政法要論』の良さを共有できると本当に嬉しいですよね。

 

ただ残念なことに本書は絶版になっています。

図書館か古書店で探してみてください。

 

応用

行政法をさらに勉強したいという方は、塩野宏行政法Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ』をお勧めします。

それぞれ総論、救済法、組織法を扱っており、大変ボリュームがあります。

的確で飾らない文章に、示唆に富む数々の注がポイントです。

特に文章は無味簡素ですが、噛めば噛むほど味わい深いものとなってます。

 

 

 

 

補足ではありますが、塩野本と並んで言及されることの多い宇賀克也『行政法概説Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ』と比較しておきます。

塩野本は縦書き、薄め、本文少なく、注多め、という感じです。

一方で、宇賀本は横書き、厚め、本文(情報量)多く、注少なめ、という感じです。

 

宇賀本には予防原則や課徴金制度(独禁法・景表法)にも言及があるなど、情報量はかなり多いと思います。

予防原則と課徴金制度について言及している行政法の教科書を私は目にしたことがありません。

詳細な情報量を求めるのであれば宇賀本の方がいいかもしれません。

 

ではまた今度。

國分功一郎『来るべき民主主義』を読んで

みなさん、こんにちは。

さっそく本紹介やっていきたいと思います。

 

ということで、今回は、國分功一郎『来るべき民主主義』の感想を述べたいと思います。

ちゃんとした「あらすじ」は、Amazonの商品説明などでチェックしてください。下にリンク貼っておきます。

 

 
概略

一応、私の方でも概略をざっくりと述べておきます。

この本は、哲学者の國分功一郎さんが、小平市住民投票に参加した体験をベースに、近代政治哲学と民主主義に欠けているものを考察するものです。

 

國分さんを含む地域住民の方々は、小平市都道328号線の計画の修正を求めて住民投票を行いました。というのも、行政が同計画へ住民の意見を適切に配慮しなかったからです。住民投票に参加した過程と結果の中で、國分さんは「住民が行政の決定に携われない」ことを問題視するようになります。

本書の中盤では、そこで浮かび上がった行政と民主主義の関係性について、政治哲学の観点から考察がなされています。そして、終盤では、新しい民主主義の在り方についての提言がなされています。

 

ちなみにこの本を読んだ理由としては、國分さんの著作の中で前から気になっていたことや、國分さんと斎藤幸平さんのラジオの中で言及されていたことで興味を持ったからです。

 

なお、斎藤幸平さんといえば、『人新生の「資本論」』がベストセラーになってますね。

 

 

個人的な意見

私個人の意見としては、「行政」という存在、提案型住民投票、民主主義の問題点等の理解を深めることができたので本書には満足しています。

行政の決定に住民が参加できないという話は抽象的には理解していました。ですが、実際に小平市住民投票を具体例としてみることで、行政が議会と住民から離れた存在と化していることに改めて気付かされました。

 

行政法学の観点から言えば、そもそも行政には一定の裁量が与えられています。議会が決定できるのは一般的なルールですから、個別具体的な運用は行政の裁量に委ねられています。

今回のケースで言えば、道路計画がどのような規模で、どのような形で実施されるか、といったことが行政の裁量に委ねられていたと思われます。

 

もっとも、行政の裁量といえども、無制限に認められるわけではありません。

特に道路建設の場合、立ち退きや環境の破壊を生じさせますので、近隣の住民のニーズに合わせて対応することが望ましいです。行政の一方的な計画の推進は、行政への不信の高まりや円滑な計画の実施に支障をきたす恐れがあります。できる限り、住民の意見を取り入れることは重要です。

 

気になる点

本書で、気になる点と言えば、住民投票に関する提言でしょうか。本書では、住民投票制度の法的な確立や、「実施必至型」の住民投票制度を設けることが提言されています。

確かに住民投票は良いものであると思いますが、メリットばかりが強調されていて、デメリットにはほぼ触れられていません(分かりやすさと紙面の都合との関係はあるとは思います…)。

 

常設型の住民投票(実施必至型を含む)のデメリットとはなんでしょうか。

それは、頻繁に住民投票が請求される恐れがあること、仮に頻繁に請求されればその都度に大きな財政負担を負うということです。住民投票の実施は無料ではありません。当然、投票のためには、相応の経費負担が同自治体に求められます。

 

住民(市民団体)が頻繁に住民投票を行えば、議会政治も滞りかねません。もちろん、住民の行政参加は重要ですので、それ自体は否定されるべきではありません。

しかし、政策課題には重要度があるはずですから、全ての政策課題について常設型住民投票にかけられるようにすることは非効率性を生み出しかねません。

 

そうすると、当たり前の帰結ですが、頻繁に実施を防ぐ常設型住民投票の開発が必要とされるのではないでしょうか。個別設置型に回帰するということは選択肢の一つではありますが、國分さんの問題提起からすれば、望ましいものではないはずです。

 

参考

ちなみに、本書は政治哲学の観点から検討されていましたが、住民投票は法学的には地方自治法からの考察がなされます。特に、住民投票が「個別設置型」であるか、「常設型」であるかは地方自治法で検討されている課題です。

地方自治法の概説書は少ないのですが、メジャーなものといえば、宇賀克也『地方自治法概説(第9版)』が参考になると思います。割と値が張るので、大学なり地域なりの図書館で読むことをお薦めします。

 

 

余談

完全に余談ですが、國分先生といえば、新潮文庫から出ている『暇と退屈の倫理学 増補版』が好評ですね。私自身は単行本で読みました。

この本もいずれご紹介できればと思います。

 

 

ではまた今度。

ブログの方針

みなさん、こんにちは。

今回はブログの方針説明をします。

 

そもそも私は公共政策(学)について勉強しています。

主に法学・政治学の観点を軸に政策の分析をしています。

 

専らの関心ごとは、制国家化と自由主義原則との緊張関係や、憲法民法の観点からのプラットフォーム事業者対策などです。

とは言え時々に応じて変わります。

 

もともとは学部で法学(法解釈)を勉強してきましたが、法を立案・分析することに関心が移り、公共政策学の勉強にシフトしました。

 

ブログの方針

本ブログでは法学・公共政策に関する本紹介や書評を行います。

扱う本の概略は必要に応じて記しますが、詳しいことはAmazonの商品説明などを参照してもらえばと思います。適宜、リンクを貼り付けておきます。

 

法学を学んできたものとして、本同士の繋がりや、参考となる本を伝えられたらいいなと思っています。

いわゆるブックツリー的なブログを作ることも目的です。

 

また、書評が少ないマイナーな本についても紹介できたらいいなと思っています。

法学(特に憲法)、公共政策に関心がある方向けの内容が多くなる予定です。

 

私自身は、法学関連の書評を行なっているブログにとても助けられてきました。

論点の整理、問題提起、関連する本の話など、独りで勉強している身としては、法学書評ブログは貴重な相談相手です。

 

その学恩を私なりに返したいということで、次の方々が参考になるようなブログをやっていきたいと思ってます。

 

ということでブログを細々とやっていきたいと思います。

ではまた今度。